目標額を大きく上回る!日本発オリジナルアニメ「Under the Dog」クラウドファンディングのKickstarterアニメ部門で世界一に
by ロミ
インディーズアニメ『Under the Dog』が日本時間の9月8日0時53分にクラウドファンディングサイトKickstarterでの約1ヶ月に及ぶ資金集めを終了した。米国ボルチモアで開催された東海岸最大の日本アニメ・マンガのコンベンション「OTAKON 2014」で制作が発表されて以来、当初は目標額の58万ドルの達成も危ぶまれていたが、最終的にはKickstarterアニメーション部門で歴代1位の支援金額を集めるという快挙を成し遂げた。
“合計$878,028、12,157名の皆様にご支援いただきました。アニメ部門Kickstarter第1位。これも皆様一人一人の協力なしに成し遂げることはできませんでした。心が折れそうなときも、これだけの方に支えられていると思うと立ち上がることができたのです。ありがとうございました。”
(日本語公式ツイッターアカウント@UndertheDogJPによるツイート)
『Under the Dog』は、2025年の東京が舞台のSFアクション&サスペンスアニメ。日本の大物クリエイターの数々が結集した新プロジェクト。
それでは、ここで作品の各スタッフをコメントと共に紹介する。
“おかげさまで『Under the Dog』がキックスターターアニメジャンルで世界一を達成出来ました。これも皆さんの応援、そしてPRスタッフの尽力の賜物と感謝しています。これからはフィルム作りに現場一丸で頑張らないと!”
(原作の『428~封鎖された渋谷で~』『タイムトラベラーズ』などを手がけたゲームクリエイターイシイジロウ氏によるツイートより。)
“目標を35万$も上回る結果に驚いています。ご支援、ありがとうございます!きっと良い作品となって皆様の元へ帰ってくると思います。”
(キャラクターデザイン担当の『どーにゃつ』『ファイアーエムブレム覚醒』『NO MORE HEROES』『パズル&ドラゴンズ』などで知られるコザキユースケ氏によるツイート)
“皆様UTDのご支援ありがとうございました!是非このままご協力ください!このようなアニメの制作方法でアニメ業界をもっと活性化したいと思っております!是非#KEEPANIMEALIVEでツイートしてください!”
(プロデューサー・音楽監督の代表作に『涼宮ハルヒの消失』『Diablo III』『SOULCALIBUR V』『El Shaddai』『戦場のヴァルキュリア』などを持つ由良浩明氏によるツイート)
“皆様の支援のおかげで予定の58万ドルを大きく越える数字を達成することが出来ました。ここから本当の戦い(アニメーション制作)が始まりますが、引き続き応援よろしくお願いします。”
(監督の『ストレンヂア 無皇刃譚』『CANAAN』『花咲くいろは』『絶園のテンペスト』などを演出してきた安藤真裕氏によるコメント)
-日本の皆様へ-
支援をしてくれた皆さん、急なお願いにもかかわらず、宣伝をご協力してくれた方々、本当にありがとうございました!。
ご好意と期待を裏切らないフィルムを作ります。これからも宜しくお願いいたします。
今回は、人との絆を本当にありがたく感じました。これからは(より一層)、皆様にやさしい小笠原になります!。
(制作スタジオ・キネマシトラスの代表、小笠原宗紀氏によるブログコメント。『ゆゆ式』『ブラック・ブレット』『ばらかもん』などを制作してきた。キネマシトラス制作日記より。イラストはK.Mさん。)
■ 凄まじかったラストスパート
9月3日付けのアニメ!アニメ!記事でも紹介したが、Kickstarterでの『Under the Dog』支援募集期限があと数日となった時点では、まだ目標額58万ドル(日本円で約6100万円)の約70%、$410,000しか集まっていなかった。支援者(backers)の数も約6千人と、このままのペースでギリギリ達成できるのか、という重苦しい雰囲気だった。クラウドファンディングのKickstarterは、設定した期日までに支援金が目標額を越えればアメリカのアマゾン経由で企画者の手元に手数料や税金を差し引いた額が届くが、到達しない場合、企画者には一銭も入らないというシビアな仕組み。
(参照記事:日本発オリジナルアニメ「Under the Dog」Kickstarterで目標額6100万円に接近中!http://animeanime.jp/article/2014/09/03/20042.html)
そんな厳しい状況の中、次々と著名なミュージシャンやゲームクリエイターなどからの応援コメントが届きはじめる。GREAT3メンバーの片寄明人氏、ゲーム制作会社サイバーコネクトツー代表取締役の松山洋氏、そしてメタルギアシリーズの生みの親として有名な小島秀夫氏などが応援コメントを発表。加えて、『ロックマン』『鬼武者』を生み出した稲船敬二氏や『ドラッグ・オン・ドラグーン』で知られるヨコオタロウ氏らもこの日本発のオリジナルアニメにエールを送った。
(稲船氏とヨコオ氏コメント出典元:Update #20 UTD: All the Feels https://www.kickstarter.com/projects/1300298569/under-the-dog/posts/975847)
さらにツイッター、ニュースサイト、ブログなどでの情報拡散やプロデューサーの由良氏がアメリカのネット掲示板「reddit」でAMA(Ask Me Anything)という質疑応答を8時間に渡って行うなど、活発なプロモーションを展開した。
そうした呼びかけが功を奏したのか、支援のペースが次第に加速していく。9月4日には目標額58万ドルを達成、ついに本作第1話本編24分のアニメーション制作が決定した。お祝いムードの中、次はいったいどこまで支援額が伸びるのか、ということに注目が集まった。通常、Kickstarterでは期日が近づくにつれてペースが上がると言われているが、それにしても最後の3~4日間の追い上げには凄まじいものがあった。
もともと第一の目標だった1話分の制作費58万ドルも高めの設定と言われていたが、次の目標の2nd goalと呼ばれる、2話分の制作費を含む目標額はなんと116万ドル!残念ながら期日までに次のゴールには届かなかったが、それでも当初目標の151%を集めた。これだけでも当初の予想を上回る、凄いことだ。
■ カウントダウンで起きたKickstarterの奇跡?
“『Under the Dog』あと8分で863,921ドル。世界一まであと8212ドル。なにが起きてる?神風?…皆さん最後の!最後の応援お願いします!”(イシイジロウ氏によるツイートより。)
日本時間の9月8日0時53分のタイムリミットを目前にし、こうつぶやいたイシイ氏。ここで氏の言う「世界一」とは何だろうか?
Kickstarterでは企画は種類ごとに分けられており、アニメーションもFilm & Videoの一つカテゴリーとして存在する。そのアニメーション部門で、これまではニューヨーク発の企画『Bee and PuppyCat: The Series』が$872,133を集め、Most funded project(支援金最高額)としてトップの座にあった。それに対し、今回『Under the Dog』が最終的に集めた支援金は$878,028。まだ作られてもいない日本のアニメ作品がKickstarterの記録を塗替え、歴代第1位に躍り出た。まだまだアメリカ産が中心ではあるものの、世界各国のプロジェクトが集まる中での、まぎれもない世界一である。(ちなみに、同じ日本発のTRIGGER制作によるオリジナルアニメ『リトルウィッチアカデミア2』は$625,518の支援を集めて第4位。)
だが、この「世界一」への道のりも、決して楽なものではなかった。『Under the Dog』の支援募集期限まで残すところあと数分。金額は記録となる87万ドルに急速に近づいてはいたが、それでも世界一にはあと一歩で届かないかもしれない…そう誰もが思っていた時にちょっとしたドラマがあった。そもそもKickstarterの支援額には様々なレベルがあり、その金額に応じて付いてくる特典も変わってくる。一番低いレベルは5ドルからなのだが、最高レベルは1万ドル、日本円に換算して約100万円である。簡単に出せる額ではない。ところが、なんとこの最高レベル1万ドルをラスト数分内に2名が出資するということが起きたのだ。まさにイシイ氏の言うところの海外からの“カミカゼ”だったのかもしれない…
■ 今後の展開は?PayPalでも支援可能
これでひとまずKickstarterでの『Under the Dog』の支援金集めは終了する。今後は支援者との交流の場を公式サイトに移し、ネットでのクレジットカード決済サービスPayPal経由による増資を受け付ける。
日本人にはあまり馴染みのないPayPalだが、日本公式サイトがあるため、その決済方法なども日本語で説明されている。こうした日本国内向けの情報も順次、公式サイトなどで告知していく予定だという。
今回、日本からのKickstarterで支援するためには英語の表示に従って操作しなくてはならなかった。PayPalのように日本語システムがあれば、本作品を支援したいと考える国内ファンも増えていくのではないだろうか。Kickstarter はハードルが高くて諦めたとしても、まだまだ参加支援型プロジェクト『Under the Dog』は終ってはいない――いや、むしろ作品制作が始まるこれからが本番なのである。
世界中からの期待と注目を集めた『Under the Dog』だが、Kickstarter支援者(backers)の手元に完成品のパッケージが届くのは2015年12月。まだこれから1年以上あるものの、支援者の多くは自分たちがサポートした作品がどんなものになるのか、心待ちにしている。
制作陣はあらゆる段階で設定や制作状況、声優の選考なども含めて支援者に対して情報を開示していき、ファンと共有していくとしている。そんな信頼関係によって作り手と受取り手が一致団結して作品づくりをしていく。これから特にアニメのインディーズ作品では、このようなオープンな作り方に変わっていくのかもしれない。
少なくとも今回、企画側も支援者も『Under the Dog』がブレークスルーになることを夢見て、支援という形でこの作品に賭けてきた。筆者もどのような作品になるのか、楽しみにしていきたい。
『Under the Dog』公式サイト
<A Href="http://under-the-dog.com/ja/" Target="_blank"> http://under-the-dog.com/ja/</A>
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