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ネルケプランニング 代表取締役 松田誠インタビュー

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日本が誇る最強コンテンツ、「アニメやコミック由来の舞台・ミュージカルは世界に輸出できるんです!」

[取材・構成: 高浩美]

■ アニメやコミックの舞台化・ミュージカル化は“ワクワク”感とライブ感、想像力で“脳内補完”

近年、アニメ・コミック・ゲームの舞台化が加速している。しかし、かつては驚きと興味を持って迎えられた。
コミックの初舞台化は宝塚歌劇団による『ベルサイユのばら』、初演は1974年。「まるでコミックから抜け出たみたい」と言われタカラヅカファン拡大につながった。アニメの初舞台化はSKD(※)の『銀河鉄道999』、初演は1980年、詳細は不明だが再々演も行われているところを見ると好評だったことが伺える。
この時代はアニメやコミックを舞台化すること自体が珍しかったが、現在は珍しくないどころか日本のショービジネス界での地位を確立しつつある。2013年5月現在、すでに39タイトル、約620,000人を動員している。その前年が51タイトル、約1,205,000人動員、想定外の勢いでシェアを伸ばしている。
それは小さい頃からアニメやコミックに親しんできた世代が成人し、可処分所得を得て自身が劇場に足を運ぼうと思えば行かれるようになったこと、アニメ・コミック・ゲームはストーリーやキャラクター等、芝居を見る前から知っていることだろう。

ミュージカル、それこそ大作と言われるものは一般観客にとっては少々敷居が高い。先入観、といってしまえばそれまでだが、「難しい」等のネガティヴな印象がある。ところが慣れ親しんだキャラクターが登場するアニメ・コミック・ゲームの舞台化はむしろ「好きなキャラクターが舞台に出てくる」というワクワク感がある。2次元から3次元に飛び出す感覚、キャラクターがリアルに汗をかき、歌い、踊る、ライブ感は観客の心をとらえる。
萌え台詞も満載、ときにはお約束の展開ではあるが、素直に面白い。人気タイトルはチケットが入手困難となり、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いである。

しかし、なんの苦労もなく“盛況”な状態になった訳ではない。これまでに様々な試みが行われた。
SMAP主演の『聖闘士星矢』(1991年)、声優を同役で起用した『サクラ大戦』(1998年)等が上演された。それから、今をさかのぼること10年前にミュージカル『テニスの王子様』初演、結果は周知の通り。何度も上演、シリーズ化されている(2013年6月現在約1,500,000人動員)。

アニメ・コミックの舞台化では“パイオニア”のネルケプランニングの代表取締役・松田誠は語る。
「日本人って特にミュージカルコンプレックスというものがあると思うんです。なんか恥ずかしい、って言うか何の興味もなく『ミュージカルを見に行こう!』なんて言う人はまず、あまりいないと思う(笑)。
でも、そういう人でも自分が見たことがあるアニメやコミックの舞台は身近だから入っていきやすい。いままで劇場に足を運んだことのない新規のお客様が入ってくる。だから、このジャンルで新しいマーケット、つまり新しい観客層を開拓出来たのではないかと思いますね。『私、『黒執事』大好きだからミュージカルも行ってみようかな』みたいな」

実際、劇場にはコスプレ姿もちらほら、『黒執事』の世界に浸っている観客も散見された。舞台を観ながら夢の世界に浸り、帰宅してもその世界観に浸れる。「ミュージカルはちょっと・・・」「演劇って難しそう」という観客を虜にするマジックがある。
「世界的に見てもエンターテイメントで数字が上がっているものしかないですからね。」
しかし面白さは“ライブ”だけではない。人間が持っている想像力がさらにその“マジック”にかけ算を加える。
「実はアニメ・コミックと舞台って表現方法似ているです。観客は“脳内補完”しているんですよ。例えばコミックのコマとコマの間、これは想像力で繋げている、そういう作業をしている。舞台も俳優が『この大宇宙で!』と叫べば劇場は宇宙になる、いわば、想像するのりしろが(共通して)あるんですよ」



■ 2次元から3次元に移行させる、だから“勝てる”そして新人を起用するから“出来ること”がある

松田誠はさらに“原作”の舞台化、つまり2次元を3次元にすることに関して
「コミックなどで描かれているものを舞台化するのは本当に大変です。原作は圧倒的に強いですからね。でも、2次元vs3次元、実は“勝てる瞬間”があるんです。それは生のライヴであるということ。例えば本当に汗をかくとか、走り抜けたら風が吹く、とか。その瞬間が実は面白いんです。
『テニスの王子様』以前からたくさんのマンガ・アニメ原作のミュージカル化にチャレンジしました。そしてその中でいろいろなことを学びました。それから『テニス~』にたどり着いたのですが、正直こうして10年やれるとは思っていませんでした。」

また、アニメやコミックを題材にした場合、キャラクターづくりのボタンを掛け違うと“致命的”になる。
「間違ってはいけないのはキャラクター自身がスターであるということなんです。とにかく自分が愛するキャラクターを見にきているのだから、キャラクターをゆがめたりしたら味方だったファンは敵になりますね。
本当に微妙なさじ加減でやっています。新人俳優は色に染まっていないので『こういう世界観でこういうキャラクターを演じて』って言っても素直に頑張れる。
しかし、どこか矛盾がある、“この俳優にやらせたい”と“この俳優にやらせる意味はなんだろう”と。例えば『テニス~』に出演している歴代の俳優がみんな同じだったら絶対に面白くないんです。俳優の個性と役のキャラクターの融合、ここが面白味なんです。しかし、それは同時に難しいところでもあるんです。その俳優の個性を引き出しながらキャラクターを裏切らずにっていう・・・。
その点、上島雪夫さん(『テニスの王子様』演出)は天才的ですね。それから、例えば『黒執事』のセバスチャン役の松下優也君などは、見事にマッチングした例です。本人とキャラクターのマッチング、これを間違えてしまうと完全にアウト!ですね」

■ アニメ・コミックの舞台・ミュージカル、これは世界に通用するコンテンツなんです。

人気タイトル『美少女戦士セーラームーン』、久々のミュージカル化が発表されているが、海外からの問い合わせがかなり来ているという。
「自分の国で公演をやらないのか?とか。チケットはどう取ればいいのですか?とか。海外でも日本のアニメやコミックは人気がありますよね。だから、アニメ・コミック原作できちんといい作品を創れば、海外にも輸出することが出来ると思っています。
海外では、マンガ・アニメをカルチャーとしてとらえているんです。いいものをつくってちゃんと整理すれば、の前提がありますが、いわゆるライセンスビジネス、やれると思っています。まだまだ、舞台化・ミュージカル化出来そうなタイトルもいっぱいありますし」
近い将来、日本のアニメ・コミック・ゲームを舞台化した作品が世界中で、その国の原語で、俳優で上演される日もそう遠くないかもしれない。舞台にはやはり“マジック”がある。

(※)SKD 松竹歌劇団のこと。浅草国際劇場を拠点としたレビュー劇団で「西の宝塚・東の松竹」と呼ばれていた。少女歌劇の隆盛を背景に1928年発足。戦前・戦後と一時代を築いたが、1970年代に入ると娯楽の多様化、本拠地・浅草の斜陽化と共に経営も苦しくなり、1990年にレビューの幕を下ろす。その後、ミュージカル劇団への再編を試みるも低迷、1996年に解散する。戦前のスターに水の江滝子、戦後は草笛光子、淡路恵子らがいた。

松田誠(まつだ・まこと)
株式会社ネルケプランニング 代表取締役
演劇プロデューサー
大小さまざまなスケールの舞台を年間40~50本、制作に携わる。
代表作は、ミュージカル『テニスの王子様』、劇団EXILE、地球ゴージャス、『テンペスト』、『ロミオ&ジュリエット』、『ロックオペラ モーツァルト』、『黒執事』 他。
演劇以外にもアニメ、映画の企画・プロデュースなど、多方面で新しいエンターテイメントを仕掛けている、日本のステージコンテンツビジネスのトップランナーの一人である。

ミュージカル『テニスの王子様』全国大会 青学vs氷帝
http://www.tennimu.com/

東京公演
TOKYO DOME CITY HALL
7月11日~28日 
大阪公演 大阪メルパルクホール
8月7日~18日
仙台公演 名取市文化会館_大ホール
8月23日~25日
福岡公演 キャナルシティ劇場
8月29日~9月1日
名古屋公演 日本特殊陶業市民会館_フォレストホール
9月4日~8日
東京凱旋公演 TOKYO DOME CITY HALL
9月19日~29日

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