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「エンダーのゲーム」ギャヴィン・フッド監督インタビュー 問題はゲームの戦いかただ

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1月18日に映画『エンダーのゲーム』が全国公開となる。米国のSF界を代表するネビュラ賞とヒューゴー賞を同時受賞した傑作を迫力の映像とした話題作である。

主人公となるエンダーは、昆虫型生命体フォーミックの攻撃から世界を守る運命のもと生まれた。映画では少年エンダーの成長と地球の命運が描かれる。

壮大な舞台とテーマから映像化不可能とも言われた本作を、見事に映画としたのがギャヴィン・フッド監督である。『ウルヴァリン: X-MEN ZERO』で名を上げた監督が、ここでは広大な宇宙と少年の内面の表現に挑んでいる。
監督はいかにして『エンダーのゲーム』に取り組んだのか?ギャヴィン・フッド監督にインタビューを行い、制作について伺った。

『エンダーのゲーム』
2014年1月18日全国公開
配給: ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン

AA
『エンダーのゲーム』は、SF小説として非常に有名です。原作から最もインスパイアされた部分はどこでしょうか?

― ギャヴィン・フッド監督(以下G・F)
ふたつあります。ひとつは『エンダーのゲーム』が少年の素晴らしい冒険物語となっていること、もうひとつは見事な視覚的な世界を喚起させることです。
映画監督から見ると、『エンダーのゲーム』では素晴らしいキャラクターが物語を引っ張っていくこと分かります。また、ストーリーはとても緻密です。いろいろな深く、大きなテーマがあり、さらに道義的な問いかけもあります。
ビジュアルとして描かなければいけない風景は素晴らしいものです。例えばバトルルームやシュミレーションルームなどです。それがとても新鮮でした。

― AA
日本ではすでにトレーラーなどで紹介されていて、映画には2つの反応があると思います。
ひとつは『エンダーのゲーム』の昔ながらのファンで、「エンダーが映画になるんだ」というものです。もうひとつ若い世代で、彼らにとっては「これは日本のアニメとかSFにも似ているね」とか、「これは自分たちのための映画かもしれない」と、いったものです。

― G・F
それはいいですね。

― AA
旧世代と新世代、こうした異なった世代に作品を送り出すと時のバランスはどう考えられたのでしょうか?

― G・F
それはいい質問ですね。確かにその通りです。
一方で原作をよく知る古いファンがいます。同時に、小説を一度も読んだことのない人も多いわけです。その両方に伝わる映画であり、またこの映画だけで物語が成り立つ必要があると考えました。
観客の全員が映画に描かれていない要素を知っていると考えてはいけないわけです。原作を読んでいない観客を置いてきぼりにしてはいけません。
同時に、映画の先の話、映画で書かれていないことを知っているファンもいます。彼らを退屈させてはいけません。映画を作るうえでは、この2つの観客を常に意識しました。

― AA
原作ファンについてはどうですか?

― G・F
原作ファンに対しては、期待を裏切らないことです。とりわけ今回のキーとなるエンディングは絶対変えられません。そんなことをしたら僕はファンから殺されるからね。(笑)

― AA
エンダーは理想的な少年にみえるのですが、これは監督にとっても理想なのですか?それとも彼にも彼なりの欠点があるのでしょうか?

― G・F
いや理想的な少年ではないと思いますよ。エンダーには多くの欠点があります。映画のなかでもそれは数多く表現されています。例えば冒頭のシーン、彼は自分を攻撃した相手に対してやり過ぎてしまうのです。相手が倒れたあとも殴り続けてしまう。
そして、エンダーは姉のヴァレンタインに語ります。それはまるで自分が嫌いな兄のピーターのようだったと。なぜ自分のなかにピーターの暴力的なところがあるのか、姉に問いかけるわけです。
これはとても重要なことです。私にとってのエンダーは、全く完全な少年ではなく、不完全な人間そのものなのです。

AA
エンダーは、人間そのものを代表しているわけですか?

― G・F
人間にはとても親切で寛大なところがあります。それと同時に大量破壊を行ったり、とても暴力的なところがあります。その対極的な要素をうちに秘めている少年がエンダーなのです。彼は、そのバランスを取り続けようと自身の中で戦い続けているのです。

― G・F
欠点のもうひとつの側面として、エンダーは戦うことが好きなのです。それは彼のエゴなのです。エンダーは、ゲームだから構わないとそれを追い続けます。
ハリソン・フォードが演じた監督官のグラッフ大佐は、エンダーが持っているその資質をうまく利用します。映画のなかでエンダーが、携帯ゲームで意表をついた勝ち方をする場面があります。友人のアーライはそうしたやり方をずるいと指摘しますが、エンダーはゲームなのだから構わないと言います。まさにそれがグラッフがエンダーを利用する理由です。アーライではないわけです。

― AA
そうしたエンダーを主人公に置くことで、監督は若い人たちに対して何かメッセージを送り出していると考えてよいのでしょか?

― G・F
メッセージと言えるかは分かりませんが、『エンダーのゲーム』をご覧になった観客に願うことは、例えば、親と子供がこの作品を鑑賞して、議論をしてもらいたい。友人同士でも議論をしてもらいたい。
例えば、戦争についてです。現在、戦争はあたかもビデオゲームのように感じることもあります。最近は無人航空機(ドローン)を使った戦争が実際にあるわけです。CNNのようなテレビニュースだけを通じてだけで戦争見ると真実の一部を見落とします。本物であるとの認識が欠落してしまうのです。
ビデオゲームとの違いは勝ち方の問題です。ゲームはとにかく勝つことが重要です。ゲームは勝てば特典を得られる。

― AA
ゲームの現実は違うと?

― G・F
しかし、実際にはどのように勝つべきか、何が重要かそれを考えて欲しいのです。実際の戦いは、戦いかたがより重要で、どのように戦ったかは次の世代まで記憶されます。大虐殺なども記憶されます。戦いかたというのはとても重要なのです。ゲームはこの戦いかたが欠落してしまいます。

実は私は空手を学んでいます。師はスターン・シュミットと言って日本人以外では初の有段者なのですが、彼に学んだことがそれです。つまりいい戦い方、自分自身にとっても、相手に対して敬意を払う戦い方を学びました。それが大切だと思います。
ただ勝てばいいと思っていればその文化は生き残れないと思います。

監督: ギャヴィン・フッド
脚本: ギャヴィン・フッド 
原作: 『エンダーのゲーム』 (オースン・スコット・カード)
[出演]
エイサ・バターフィールド、ヘイリー・スタインフェルド、ベン・キングズレー 
ヴィオラ・デイヴィス、アビゲイル・ブレスリン
ハリソン・フォード

【関連写真】「エンダーのゲーム」ギャヴィン・フッド監督インタビュー “問題はゲームの戦いかただ”

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