posted by Jay Kogami
Pandora、ネットラジオの楽曲使用料を下げる法制定を断念
アメリカ最大のネットラジオPandoraは、ネットで再生される楽曲使用料の支払いを減らすための法案「Internet Radio Fairness Act」を制定するためアメリカ議会を相手に進めてきたロビー活動を止めることを発表しました。
Pandoraは今後、連邦法制定に向けた活動をストップする代わりに、ネットラジオサービスが支払うロイヤリティ料を決める委員会「Copyright Royalty Board (CRB)」へロビー活動を注力する戦略にシフトします。
Pandoraの楽曲使用料は何が問題?
Internet Radio Fairness Actは、ネットラジオ・サービスが支払う楽曲使用料を決めるプロセスを変えるための法案です。
衛星デジタルラジオが現在支払うロイヤリティ料は粗利益の9%で、2017年まで毎年0.5%づつ増加します。ケーブルラジオが支払うロイヤリティ料は粗利益の8%で、2014年から2017年の間で8.5%増加します。ウェブ放送の場合、1ストリーミング再生あたりに支払うロイヤリティ料は固定されており、現在CRBが定めるレートは再生1回につき0.23セントを支払います。Pandoraなど「ウェブキャスター」と呼ばれるネットオンリーのラジオサービスは、2009年に制定されたWebcaster Settlement Actに基づき、再生1回につき0.12セントを支払います。ユーザー規模の大きい(月間アクティブユーザーは7000万人以上)のPandoraは利益の50%以上をロイヤリティ料支払いに費やしています。
もしこの法案が制定されれば、Pandoraは自分たちが支払うロイヤリティ料を低くできたでしょう。一方で、アーティストやレーベル、権利者への収入は今よりも低くなる可能性がありました。
今回の法案はPandora以外の企業も支持をしてきましたが、最も声を上げていたPandoraがロビー活動を別方面に変えたことで、事実上制定されることはなくなります。Internet Radio Fairness Act制定に向けてPandoraはロビイストを雇用したり、創業者のティム・ウェスターグレンがワシントンDCを訪れ議会で証言もしています。
Internet Radio Fairness Actには多くの団体が反対してきました。RIAAの会長兼CEOのキャリー・シャーマン(Cary Sherman)はInternet Radio Fairness Actの終焉を「音楽業界にとって、歴史的瞬間」とコメントしています。レーベル/業界組合やSoundExchangeやRIAAなど業界団体は、Internet Radio Fairness Act廃止に向けた活動を、メディアや広告、SNSを通じ行ってきました。
またリアーナ、ケイティ・ペリー、ブライアン・ウィルソン、NASなどアーティストも、Pandoraのロビー活動とInternet Radio Fairness Actに反対する文書に署名しています。
今後Pandoraには2つの可能性が考えられます。1つはCRBへのロビー活動によって、これから規定される楽曲使用料をできるだけ低くすることです。ネットラジオが支払う現行のロイヤリティ料は2015年まで有効です。そしてCRBは2014年に今後5年のロイヤリティ料を決めるプロセスを開始します。2つ目は、規定に準拠せずに、レーベルや権利者と独自に交渉し楽曲使用料を決めることです。
例えばアップルは、Pandoraと同じ音楽ストリーミングサービス「iTunes Radio」のロイヤリティ料はCRBが決定したレートではなく、各レーベルや権利者と個別に交渉して決定しています。ネットラジオ「iHeartRadio」を運営するクリア・チャンネル・コミュニケーションズもワーナーミュージックやインディーズ・レーベルと個別の契約を結び始めました。音楽ストリーミングサービスの「Spotify」や「Rdio」も同様に、個別の契約を結んでいます。
Pandoraも同様にレーベルや権利者と個別にロイヤリティ料支払いで交渉する可能性もあります。Pandoraは株式上場と昨年に株式の売り出しを行ったため5億ドル以上のキャッシュを現在保有しています。
しかしPandoraは2000年の創業以来、これまで権利者と個別に交渉したことはありません。
Pandoraのロビー活動を法制定から規制団体へ変えたことは、デジタル音楽サービスのロイヤリティ料支払いが1年や2年で変えられるほど、単純な議論ではないということを照明しました。特にアメリカの場合、ネットラジオの楽曲使用料が議会で決められたレートに左右されるため、Pandoraなどの企業が支払いを変えようとしても時間がかかってしまいます。
また今回の議論では、アーティスト達への収入を犠牲にして自社の利益を追求することをPandoraは推し進めようとしてきたことで、Pandoraはアーティストやレーベルに対してネガティブなサービスとしての見方が強まったと言えます。特にPandoraは、楽曲使用料を減らす法制定がどのようにアーティストにとってメリットになるかを提示することが出来ずにきました。もしかするとPandoraはCRBから低い楽曲使用料を引き出せるかもしれません。しかしアーティストやレーベルや業界団体との関係はなかなか戻らないかもしれません。
■記事元:http://jaykogami.com/2013/12/4981.html
記事提供:All Digital Music
■ジェイ・コウガミ プロフィール:http://jaykogami.com/about
■Jay Kogami Twitter:http://twitter.com/jaykogami
■Jay Kogami facebook:https://www.facebook.com/JayKogamiPosterous
Pandora、ネットラジオの楽曲使用料を下げる法制定を断念
アメリカ最大のネットラジオPandoraは、ネットで再生される楽曲使用料の支払いを減らすための法案「Internet Radio Fairness Act」を制定するためアメリカ議会を相手に進めてきたロビー活動を止めることを発表しました。
Pandoraは今後、連邦法制定に向けた活動をストップする代わりに、ネットラジオサービスが支払うロイヤリティ料を決める委員会「Copyright Royalty Board (CRB)」へロビー活動を注力する戦略にシフトします。
Pandoraの楽曲使用料は何が問題?
Internet Radio Fairness Actは、ネットラジオ・サービスが支払う楽曲使用料を決めるプロセスを変えるための法案です。
衛星デジタルラジオが現在支払うロイヤリティ料は粗利益の9%で、2017年まで毎年0.5%づつ増加します。ケーブルラジオが支払うロイヤリティ料は粗利益の8%で、2014年から2017年の間で8.5%増加します。ウェブ放送の場合、1ストリーミング再生あたりに支払うロイヤリティ料は固定されており、現在CRBが定めるレートは再生1回につき0.23セントを支払います。Pandoraなど「ウェブキャスター」と呼ばれるネットオンリーのラジオサービスは、2009年に制定されたWebcaster Settlement Actに基づき、再生1回につき0.12セントを支払います。ユーザー規模の大きい(月間アクティブユーザーは7000万人以上)のPandoraは利益の50%以上をロイヤリティ料支払いに費やしています。
もしこの法案が制定されれば、Pandoraは自分たちが支払うロイヤリティ料を低くできたでしょう。一方で、アーティストやレーベル、権利者への収入は今よりも低くなる可能性がありました。
今回の法案はPandora以外の企業も支持をしてきましたが、最も声を上げていたPandoraがロビー活動を別方面に変えたことで、事実上制定されることはなくなります。Internet Radio Fairness Act制定に向けてPandoraはロビイストを雇用したり、創業者のティム・ウェスターグレンがワシントンDCを訪れ議会で証言もしています。
Internet Radio Fairness Actには多くの団体が反対してきました。RIAAの会長兼CEOのキャリー・シャーマン(Cary Sherman)はInternet Radio Fairness Actの終焉を「音楽業界にとって、歴史的瞬間」とコメントしています。レーベル/業界組合やSoundExchangeやRIAAなど業界団体は、Internet Radio Fairness Act廃止に向けた活動を、メディアや広告、SNSを通じ行ってきました。
またリアーナ、ケイティ・ペリー、ブライアン・ウィルソン、NASなどアーティストも、Pandoraのロビー活動とInternet Radio Fairness Actに反対する文書に署名しています。
今後Pandoraには2つの可能性が考えられます。1つはCRBへのロビー活動によって、これから規定される楽曲使用料をできるだけ低くすることです。ネットラジオが支払う現行のロイヤリティ料は2015年まで有効です。そしてCRBは2014年に今後5年のロイヤリティ料を決めるプロセスを開始します。2つ目は、規定に準拠せずに、レーベルや権利者と独自に交渉し楽曲使用料を決めることです。
例えばアップルは、Pandoraと同じ音楽ストリーミングサービス「iTunes Radio」のロイヤリティ料はCRBが決定したレートではなく、各レーベルや権利者と個別に交渉して決定しています。ネットラジオ「iHeartRadio」を運営するクリア・チャンネル・コミュニケーションズもワーナーミュージックやインディーズ・レーベルと個別の契約を結び始めました。音楽ストリーミングサービスの「Spotify」や「Rdio」も同様に、個別の契約を結んでいます。
Pandoraも同様にレーベルや権利者と個別にロイヤリティ料支払いで交渉する可能性もあります。Pandoraは株式上場と昨年に株式の売り出しを行ったため5億ドル以上のキャッシュを現在保有しています。
しかしPandoraは2000年の創業以来、これまで権利者と個別に交渉したことはありません。
Pandoraのロビー活動を法制定から規制団体へ変えたことは、デジタル音楽サービスのロイヤリティ料支払いが1年や2年で変えられるほど、単純な議論ではないということを照明しました。特にアメリカの場合、ネットラジオの楽曲使用料が議会で決められたレートに左右されるため、Pandoraなどの企業が支払いを変えようとしても時間がかかってしまいます。
また今回の議論では、アーティスト達への収入を犠牲にして自社の利益を追求することをPandoraは推し進めようとしてきたことで、Pandoraはアーティストやレーベルに対してネガティブなサービスとしての見方が強まったと言えます。特にPandoraは、楽曲使用料を減らす法制定がどのようにアーティストにとってメリットになるかを提示することが出来ずにきました。もしかするとPandoraはCRBから低い楽曲使用料を引き出せるかもしれません。しかしアーティストやレーベルや業界団体との関係はなかなか戻らないかもしれません。
■記事元:http://jaykogami.com/2013/12/4981.html
記事提供:All Digital Music
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