■ マフィア梶田
人は誰しも、心の海に“ペルソナ”を住まわせている。多感であるがゆえに生じた自己矛盾に悩み、ひたすら膨張を続けるペルソナを律する術を持たない少年時代。その苦しみは“シャドウ”の否定と、“タナトス”の甘い誘惑を招く。
……あの頃、自分は何を望み、何を成したかったのか。2006年7月13日にリリースされたPlayStation(R)2用RPG『ペルソナ3』は、ある意味で筆者にその“答え”を見せてくれた作品だ。
1日と1日の狭間にある「影時間」にはこびる怪物「シャドウ」と、それに対抗しうる唯一の手段である“心の力”を「ペルソナ」として具現化できる「ペルソナ使い」たちの戦い。“生と死”をテーマとした深遠なストーリーと、学園生活において様々なコミュニティを築くことでペルソナが成長し、仲間との“絆”がそのままシャドウと戦う力になるという特徴的なシステムが多くのユーザーを魅了した。
「我は汝、汝は我」。疑似体験であるとはいえ、本作の主人公に自己を投影することで肥大化したペルソナと一種の“決着”をつけることができたプレイヤーは多いのではないだろうか。表層人格の完全なコントロールと、心の壁を打ち砕く絆の強さ。『ペルソナ3』には、我々が少年期に手に入れたくてたまらなかったものが詰まっている。
……そして、そんな『ペルソナ3』をアニメ化した作品が2013年11月23日に公開された『PERSONA3 THE MOVIE #1 Spring of Birth』だ。過去に『ペルソナ ~トリニティ・ソウル~』という『ペルソナ3』の世界から10年後のパラレルワールドを描いたTVアニメが放送されているが、ゲーム本編に忠実なアニメ化はこれが初めてとなる。
なお、その点においては『ペルソナ3』の続編である『ペルソナ4』をTVアニメ化したTVアニメ『ペルソナ4』という成功例があり、同作は徹底した原作再現へのこだわりによってファンの心をガッシリと掴んだ。そのためか、『PERSONA3 THE MOVIE #1 Spring of Birth』も同様に原作の雰囲気を活かした演出が多分に盛り込まれているのが特徴となっている。
ほとんどの場面においてゲームの選択肢そのままのセリフを口にする主人公(※アニメ版での名前は結城 理)や、ペルソナ対シャドウの戦闘における弱点・耐性の概念、個性的な“目黒サウンド”の挿入タイミングなど、全体的に「原作ファンを喜ばせよう」という意図が強く感じられる仕上がりだ。
特にビジュアル面においては、影時間の描き方が見事というほかない。空に浮かぶ青緑色の満月、静止した闇の中で物言わぬ棺と化した人々、不気味に聳え立つ迷宮の塔“タルタロス”といった、『ペルソナ3』特有の恐ろしくも美しい退廃的な世界観を完璧にアニメへと落とし込んでいる。
もちろん、原作をプレイしたことが無くとも問題無くストーリーを理解できる作りにはなっているが、個人的にはやはり原作をプレイした「キミの記憶」を重ねながら楽しむのに適した作品だと感じる。眩しく輝く、かけがえのない時と知らずに過ごしていたあの頃……それがアニメという形で蘇ったことにひとまずは喜び、今後どのようにして終わりへと向かっていくのか注目していきたいところだ。
劇場版『PERSONA3 THE MOVIE #1 Spring of Birth』
2013年11月23日公開
劇場版「ペルソナ3」公式サイト
http://www.P3M.jp/
■ マフィア梶田
二次元をこよなく 愛するフリーライター。主にゲーム・アニメ系の記事を執筆しているほか、『ペルソナ2 罪』DLCクエストや『コープスパーティー 2U』、『月英学園 -kou-』などゲームシナリオも手掛ける。また、ラジオパーソナリティやイベントMCとしても活躍中で、なぜか映画『Wonderful World』 には"龍興"役で出演。ライターの領分を超えて色々とやり過ぎた結果、肥大化したペルソナのコントロールがきかなくなってきているのが最近の悩み。
【関連写真】終わりの始まりにキミの記憶が重なる:マフィア梶田―「PERSONA3 THE MOVIE #1 Spring of Birth」
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人は誰しも、心の海に“ペルソナ”を住まわせている。多感であるがゆえに生じた自己矛盾に悩み、ひたすら膨張を続けるペルソナを律する術を持たない少年時代。その苦しみは“シャドウ”の否定と、“タナトス”の甘い誘惑を招く。
……あの頃、自分は何を望み、何を成したかったのか。2006年7月13日にリリースされたPlayStation(R)2用RPG『ペルソナ3』は、ある意味で筆者にその“答え”を見せてくれた作品だ。
1日と1日の狭間にある「影時間」にはこびる怪物「シャドウ」と、それに対抗しうる唯一の手段である“心の力”を「ペルソナ」として具現化できる「ペルソナ使い」たちの戦い。“生と死”をテーマとした深遠なストーリーと、学園生活において様々なコミュニティを築くことでペルソナが成長し、仲間との“絆”がそのままシャドウと戦う力になるという特徴的なシステムが多くのユーザーを魅了した。
「我は汝、汝は我」。疑似体験であるとはいえ、本作の主人公に自己を投影することで肥大化したペルソナと一種の“決着”をつけることができたプレイヤーは多いのではないだろうか。表層人格の完全なコントロールと、心の壁を打ち砕く絆の強さ。『ペルソナ3』には、我々が少年期に手に入れたくてたまらなかったものが詰まっている。
……そして、そんな『ペルソナ3』をアニメ化した作品が2013年11月23日に公開された『PERSONA3 THE MOVIE #1 Spring of Birth』だ。過去に『ペルソナ ~トリニティ・ソウル~』という『ペルソナ3』の世界から10年後のパラレルワールドを描いたTVアニメが放送されているが、ゲーム本編に忠実なアニメ化はこれが初めてとなる。
なお、その点においては『ペルソナ3』の続編である『ペルソナ4』をTVアニメ化したTVアニメ『ペルソナ4』という成功例があり、同作は徹底した原作再現へのこだわりによってファンの心をガッシリと掴んだ。そのためか、『PERSONA3 THE MOVIE #1 Spring of Birth』も同様に原作の雰囲気を活かした演出が多分に盛り込まれているのが特徴となっている。
ほとんどの場面においてゲームの選択肢そのままのセリフを口にする主人公(※アニメ版での名前は結城 理)や、ペルソナ対シャドウの戦闘における弱点・耐性の概念、個性的な“目黒サウンド”の挿入タイミングなど、全体的に「原作ファンを喜ばせよう」という意図が強く感じられる仕上がりだ。
特にビジュアル面においては、影時間の描き方が見事というほかない。空に浮かぶ青緑色の満月、静止した闇の中で物言わぬ棺と化した人々、不気味に聳え立つ迷宮の塔“タルタロス”といった、『ペルソナ3』特有の恐ろしくも美しい退廃的な世界観を完璧にアニメへと落とし込んでいる。
もちろん、原作をプレイしたことが無くとも問題無くストーリーを理解できる作りにはなっているが、個人的にはやはり原作をプレイした「キミの記憶」を重ねながら楽しむのに適した作品だと感じる。眩しく輝く、かけがえのない時と知らずに過ごしていたあの頃……それがアニメという形で蘇ったことにひとまずは喜び、今後どのようにして終わりへと向かっていくのか注目していきたいところだ。
劇場版『PERSONA3 THE MOVIE #1 Spring of Birth』
2013年11月23日公開
劇場版「ペルソナ3」公式サイト
http://www.P3M.jp/
■ マフィア梶田
二次元をこよなく 愛するフリーライター。主にゲーム・アニメ系の記事を執筆しているほか、『ペルソナ2 罪』DLCクエストや『コープスパーティー 2U』、『月英学園 -kou-』などゲームシナリオも手掛ける。また、ラジオパーソナリティやイベントMCとしても活躍中で、なぜか映画『Wonderful World』 には"龍興"役で出演。ライターの領分を超えて色々とやり過ぎた結果、肥大化したペルソナのコントロールがきかなくなってきているのが最近の悩み。
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