7月6日に全国公開をスタート、大ヒット中の『モンスターズ・ユニバシティー』は、2002年の『モンスターズ・インク』のマイクとサリーが活躍する新たな映画だ。ストーリーは『モンスターズ・インク』の始まる前、仲のよい二人が、大学時代にそもそも知合った頃のお話だ。
この頃のサリーは少し態度の大きな自信家で、努力家のマイクはそんなサリーとライバル関係。ところがやがて二人は仲間たちと協力して、怖がらせ大会に挑戦することになる。
この映画の製作指揮を執ったのが、製作プロデューサー コーリー・レイである。『バグズ・ライフ』や『トイ・ストーリー』のアニメーション・マネジャー経て、『モンスターズ・インク』ではアソシエイト・プロデューサーに。『カールじいさんの空飛ぶ家』では、プリプロダクションプロデューサーを務めた。ピクサーでのキャリアは20年に及ぶ。
来日したコーリー・レイに、10年の時を経て、スクリーンに戻ってきたマイクとサリーについて、そして新たな作品の『モンスターズ・ユニバシティー』の魅力と制作の裏側、さらにピクサーのプロデューサーの仕事についてインタビューした。
まずは、映画の製作のきっかけ、そして前作『モンスターズ・インク』とつながりについて伺った。
■ 企画のスタートは5年前
--アニメ!アニメ!(以下AA)
『モンスターズ・インク』は大ヒット作ですからその新作が登場することに、驚きというよりも当然だなという気がします。むしろ、前作から10年以上も経ったのはなぜなのでしょうか?
コーリー
たぶんお判りでしょうが、他の映画が非常に忙しかったということがあります。ところが5年前に、『モンスターズ・インク』の話をした時に、これは是非映画にしたいというアイディアを見つけたんです。それが始まりです。
--AA
その時になぜ続編でなく、前日譚になったのでしょうか?これは今回の映画な大きなポイントだと思います。
コーリー
前作でマイクとサリーが仲のいい友達だというのは、すでに分かっていますよね。ただ、この二人がどこで出会って、どうしてこんなに仲のいい友達になったのか。そこを探りたいという気持ちがありました。それがこの映画になったのです。
--AA
今回、前作と大きな違いとして、人間があまり出て来ません。これは敢えて人間が出るのを避けたのですか?
コーリー
これはとても重要なことでした。前作に出て来たマイクとサリーと、人間の女の子ブーとの関係性を大事にしたかったんです。彼らにとっては、人間は恐怖の対象だったわけです。それを残すためには、あえて人間を描かないほうがよいと判断しました。
■ 子どもの頃の恐怖体験、それが普遍性の源
映画を作るうえでキャラクターは、重要な位置を占める。『モンスターズ・ユニバシティー』の主人公マイクとサリー、プロデューサーは彼らを作るうえで何に気をつけているのだろう。
--AA
モンスターというキャラクターをここでまた登場させたわけですが、モンスターたちには普遍性があると考えてもいいでしょうか?時代もそうですし、国も含めてなのですが。
コーリー
普遍性はあると思いますね。監督であるピート・ドクが、本作について最初に考えついたのは、子どもの頃に誰もがある恐怖体験なのです。そうした体験は、世界も越えて、時代も越えて普遍ですから、映画も普遍だと思います。
--AA
モンスターたちが、国によって受け止められかたが違うと感じられることはありますか?
コーリー
国の文化によって多少の違いはありますよね。ただ、根本の伝えたいメッセージへの理解とかは、あまり違いはありません。それは日本でも同じなんです。
--AA
プロデューサーとしては、キャラクターにとって一番大切なことは何だと思いますか?
コーリー
まず観た人が理解出来ることが重要です。モンスターのなかにも、きちんと気持ちがあることが伝わることです。モンスターはモンスターでまじめに生きている、誠意のある存在であることが分かることがキャラクターとして大事だと思います。
大ヒット作を次々に生み出すピクサー。そのなかで製作をマネジメントするプロデューサーの仕事は、その役割も大きいはずだ。実際に、プロデューサーはこの中で、日々どう仕事をしているのだろうか?
■ ピクサーのプロデューサーとは?
--AA
これまでプロデューサーとして多くのピクサーの作品に携わっておられます。多くの人は、ピクサーの作品と仕事に大きな期待をしています。仕事のなかでピクサーらしさを意識されることはありますか?
コーリー
ピクサーで働いているから、ピクサー的な仕事をしなければいけないと、あまり意識することはないですね。ただ、ピクサーの特徴は制作にあたってとてもよくいろいろな人と協力することです。監督、脚本、キャラクターなど様々な面に及びます。それがピクサー的と言えるかもしれません。
--AA
ピクサーらしさは、そうした中で湧き上ってくるものと考えていいですか。
コーリー
まさにその通りですね。
--AA
とはいえ、ハイクオリティは常に求められています。
コーリー
そうですね。そうした意味でピクサーは、いつもアーティストが自分を超えることを目指しながら努力を続けている場所です。それだけは確実に言えますので、これについては全く心配していません。
--AA
時にはプロデューサーは怖い人というイメージもあるのですが、コーリーさんが、アーティストに厳しく言われることなどはありますか?
コーリー
それは誤解ですね。(笑)
イエスとかノーとかいうのは私の仕事ではないのです。むしろ、私の仕事は物事のやりかたをどうすればいいのかを考え、整え、イエスと言ってもらうことです。もちろん決断を求められることもありますが、それは白黒決めることではなく、どう問題を解決するかです。
--AA
いまの時代はアニメーション業界で働きたい人は、とても多く、プロデューサーは人気の職種のひとつです。どうしたら優れたプロデューサーになれるか、最後にそうした人にアドバイスをいただけますか。
コーリー
私だけでなく、私の周りにいるプロデューサーは、最初はひとつひとつ学ぶところからスタートしています。フィルムを作ることを好きになり、全体をきちんと理解すること、各部署のことを本当に充分飲み込んで、知ることがまず必要です。
そして、まずはどんな部署でもいいからスタジオで働き始めることです。それが全てが役に立ちます。
そして最後に学び続けることです。私も20年間、いまでも学んでいますから。
--AA
ありがとうございました。
『モンスターズ・ユニバシティー』
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来日したコーリー・レイに、10年の時を経て、スクリーンに戻ってきたマイクとサリーについて、そして新たな作品の『モンスターズ・ユニバシティー』の魅力と制作の裏側、さらにピクサーのプロデューサーの仕事についてインタビューした。
まずは、映画の製作のきっかけ、そして前作『モンスターズ・インク』とつながりについて伺った。
■ 企画のスタートは5年前
--アニメ!アニメ!(以下AA)
『モンスターズ・インク』は大ヒット作ですからその新作が登場することに、驚きというよりも当然だなという気がします。むしろ、前作から10年以上も経ったのはなぜなのでしょうか?
コーリー
たぶんお判りでしょうが、他の映画が非常に忙しかったということがあります。ところが5年前に、『モンスターズ・インク』の話をした時に、これは是非映画にしたいというアイディアを見つけたんです。それが始まりです。
--AA
その時になぜ続編でなく、前日譚になったのでしょうか?これは今回の映画な大きなポイントだと思います。
コーリー
前作でマイクとサリーが仲のいい友達だというのは、すでに分かっていますよね。ただ、この二人がどこで出会って、どうしてこんなに仲のいい友達になったのか。そこを探りたいという気持ちがありました。それがこの映画になったのです。
--AA
今回、前作と大きな違いとして、人間があまり出て来ません。これは敢えて人間が出るのを避けたのですか?
コーリー
これはとても重要なことでした。前作に出て来たマイクとサリーと、人間の女の子ブーとの関係性を大事にしたかったんです。彼らにとっては、人間は恐怖の対象だったわけです。それを残すためには、あえて人間を描かないほうがよいと判断しました。
■ 子どもの頃の恐怖体験、それが普遍性の源
映画を作るうえでキャラクターは、重要な位置を占める。『モンスターズ・ユニバシティー』の主人公マイクとサリー、プロデューサーは彼らを作るうえで何に気をつけているのだろう。
--AA
モンスターというキャラクターをここでまた登場させたわけですが、モンスターたちには普遍性があると考えてもいいでしょうか?時代もそうですし、国も含めてなのですが。
コーリー
普遍性はあると思いますね。監督であるピート・ドクが、本作について最初に考えついたのは、子どもの頃に誰もがある恐怖体験なのです。そうした体験は、世界も越えて、時代も越えて普遍ですから、映画も普遍だと思います。
--AA
モンスターたちが、国によって受け止められかたが違うと感じられることはありますか?
コーリー
国の文化によって多少の違いはありますよね。ただ、根本の伝えたいメッセージへの理解とかは、あまり違いはありません。それは日本でも同じなんです。
--AA
プロデューサーとしては、キャラクターにとって一番大切なことは何だと思いますか?
コーリー
まず観た人が理解出来ることが重要です。モンスターのなかにも、きちんと気持ちがあることが伝わることです。モンスターはモンスターでまじめに生きている、誠意のある存在であることが分かることがキャラクターとして大事だと思います。
大ヒット作を次々に生み出すピクサー。そのなかで製作をマネジメントするプロデューサーの仕事は、その役割も大きいはずだ。実際に、プロデューサーはこの中で、日々どう仕事をしているのだろうか?
■ ピクサーのプロデューサーとは?
--AA
これまでプロデューサーとして多くのピクサーの作品に携わっておられます。多くの人は、ピクサーの作品と仕事に大きな期待をしています。仕事のなかでピクサーらしさを意識されることはありますか?
コーリー
ピクサーで働いているから、ピクサー的な仕事をしなければいけないと、あまり意識することはないですね。ただ、ピクサーの特徴は制作にあたってとてもよくいろいろな人と協力することです。監督、脚本、キャラクターなど様々な面に及びます。それがピクサー的と言えるかもしれません。
--AA
ピクサーらしさは、そうした中で湧き上ってくるものと考えていいですか。
コーリー
まさにその通りですね。
--AA
とはいえ、ハイクオリティは常に求められています。
コーリー
そうですね。そうした意味でピクサーは、いつもアーティストが自分を超えることを目指しながら努力を続けている場所です。それだけは確実に言えますので、これについては全く心配していません。
--AA
時にはプロデューサーは怖い人というイメージもあるのですが、コーリーさんが、アーティストに厳しく言われることなどはありますか?
コーリー
それは誤解ですね。(笑)
イエスとかノーとかいうのは私の仕事ではないのです。むしろ、私の仕事は物事のやりかたをどうすればいいのかを考え、整え、イエスと言ってもらうことです。もちろん決断を求められることもありますが、それは白黒決めることではなく、どう問題を解決するかです。
--AA
いまの時代はアニメーション業界で働きたい人は、とても多く、プロデューサーは人気の職種のひとつです。どうしたら優れたプロデューサーになれるか、最後にそうした人にアドバイスをいただけますか。
コーリー
私だけでなく、私の周りにいるプロデューサーは、最初はひとつひとつ学ぶところからスタートしています。フィルムを作ることを好きになり、全体をきちんと理解すること、各部署のことを本当に充分飲み込んで、知ることがまず必要です。
そして、まずはどんな部署でもいいからスタジオで働き始めることです。それが全てが役に立ちます。
そして最後に学び続けることです。私も20年間、いまでも学んでいますから。
--AA
ありがとうございました。
『モンスターズ・ユニバシティー』
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